ご存じでしたか？アスベストの意外な歴史
- Goro Kosaka
- 8月19日
- 読了時間: 4分
更新日：9月16日
最近は少し気温も落ち着いてきたような気がするのですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
お盆の帰省や休暇で、ご実家や歴史ある街を訪れている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、建材としてのイメージが強いアスベストを建材以外のお話と歴史を踏まえてご紹介したいと思います。 アスベスト、実は古代から日用品として幅広く利用されていた事実があるんです。それでは、本題に入っていきたいと思います。
アスベストが希少品だった時代
アスベストは多くの歴史で貴重なものとしてみなされていました。燃えない繊維という魔法のような特性が、権威や富の象徴としての価値も持っていたのです。そんなアスベストが希少品だった時代、アスベストはどのように使われていたのでしょうか。逸話とともにご紹介いたします。
アスベストは耐火性に加え、その耐久性から、紀元前2500年頃から家庭用品の有用な材料として利用されていたようです。1930年にフィンランドのユオヤルヴィ湖のほとりに埋められた古代の土器にアスベストが添加されて強化されていたことが明らかになっています。
アスベストは中国において非常に古くから知られており、世界で最も早く発見された国の一つとも言われています。古代中国では火で洗える布「火浣布（かかんふ）」が作られ、祭祀用品として使用されていたといいます。周穆王元年（西暦紀元前976年）に周穆王に“火浣布”を捧げたという記述があり、西暦1世紀のローマの大プリニウスが、燃えない新しい種類の麻布を紹介しています。その説明では、貴族の遺体をくるむ葬儀用衣服にも使用され、燃えないことにより遺骨灰が薪の山から分離されるのに役立ったようです。
また、神聖ローマ帝国の皇帝カール大帝は純粋なアスベストで織られた輝く白いテーブルクロスに豪華な宴を並べるのを好んだといいます。客が満腹になった後、王はテーブルクロスをテーブルから取り上げ、暖炉に投げ入れ客を驚かせたと言うエピソードもあります。
また、アメリカ合衆国の建国の父の一人として知られるベンジャミン・フランクリンが若い頃にロンドンで無一文になったとき、自分のアスベスト製の財布を博物コレクターに売って借金を支払ったという話まであります。この財布は、現在ロンドンの自然史博物館の鉱物ギャラリーに保管されています。
日本でも1764年（明和元年）に平賀源内が秩父でアスベストを発見し、「火浣布」の製作に成功しています。
産業革命以降（18世紀後半〜19世紀）
産業革命の進展に伴い、耐熱性や絶縁性を持つ素材の需要が急激に高まりました。その中でアスベストの利用範囲も広がり、これまで以上にさまざまな用途で活用されるようになります。工業用途では蒸気機関の断熱材や保温材、家庭用品ではテーブルクロスやナプキン、医療の分野では包帯やフィルターなどに使用されています。
日本では1896年に「日本アスベスト社」が設立。布団、塗料、布、パッキンなど、多岐にわたるアスベスト製品の製造が本格化し、これ以降のアスベスト製品の発展につながっていきます。
まとめ
いかがでしたでしょうか？アスベストは建材のみでなく、古代から日用品や工業製品にも多く利用されていました。しかし、その後健康被害が明らかになり、現在では多くの国で使用が禁止されている事実は、皆様もすでにご存じのとおりです。
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参考文献：
大田区. 「アスベストについて」
(2025年7月15日閲覧)
銭永東, 後藤恵之輔. (2007). 「中国のアスベスト利用状況の検討」. 長崎大学工学部研究報告, 37(68), 67-71.
ニチアス株式会社.「会社案内」.
(2025年7月15日閲覧).
Gorvett, Zaria. "Asbestos: The strange past of the 'magic mineral." BBC, 7 Feb. 2024, https://www.bbc.com/future/article/20240207-asbestos-the-strange-past-of-the-magic-mineral
(2025年7月15日閲覧).
