初めてEFAラボラトリーズのアスベスト定性分析 JIS A 1481-1(JIS-1)の分析結果報告書をご覧になる方から、「どこをどう見たらいいかわからない」とお問合せをいただくことがあります…
しかし、注目ポイントを知っているお客様からは、「使いやすい!」とも言ってもらえる報告書ですので、この読み方ガイドでは、7つの注目読解ポイントを一つずつご紹介いたします。
▶もくじ◀
はじめに
アスベスト分析結果報告書の構成と想定している読み方
ポイントに入る前に報告書全体の構成についてざっくりと解説します。EFAラボラトリーズのJIS A 1481-1の分析結果報告書は、①表紙、②結果一覧表、③層別詳細結果、④分析依頼書控え、そして⑤巻末(分析方法概要)の5つのパートから構成されています。
報告書の読み方としては、まず、表紙をめくって「結果一覧表」で全体をざっと見て、その次のページの「層別詳細結果」のパートでじっくり、層毎の結果を確認して、最後に分析方法について確認したいときに巻末をめくって分析方法の概要ご覧いただくという使い方を想定しています。
アスベスト定性分析JIS A 1481-1の結果報告の表記について
JIS A 1481-1は、分析結果報告にアスベスト種類と目視推定量に基づく大まかなアスベスト含有濃度の範囲を示すことを推奨しています。そのため、EFAラボラトリーズではJIS A 1481-1の推奨にならい目視評価によるアスベスト含有濃度範囲として以下の5つの含有量表記にて分析結果を報告しています。
アスベスト繊維「不検出」
アスベスト繊維を「微量に検出」※(後述)
アスベスト含有量「0.1%超- 5%以下」
アスベスト含有量「5 %超-50%以下」
アスベスト含有量「50%超-100%」
※「微量に検出」について
アスベスト繊維がごく低濃度で検出され、非意図的なアスベスト混入が疑われるか、アスベスト含有量が0.1%以下の可能性がある場合に「微量に検出」となります。「微量に検出」になる試料は以下の2つのケースがあります。
周辺のアスベスト建材から遊離したアスベストが付着したケース(いわゆるコンタミ)
自然由来の不純物としてのアスベスト(アクチノライトアスベスト、トレモライトアスベスト、アンソフィライトアスベスト)のため、含有量が偏在しているケース
アスベスト繊維が不検出の場合は「アスベスト不含有」。0.1%を超えた範囲でアスベストが検出された場合は「アスベスト含有」と判断が簡単ですが、「微量に検出」となった場合に判断の仕方に悩むことがあるとお聞きしたことがあります。「微量に検出」の結果が出た場合には、以下の2つの判断方法があります。
0.1%以下の含有量を確認するために、追加で定量分析を実施する(EFAラボラトリーズでは、追加オプションの定量分析JIS A 1481-4をご提供しています)。
「追加で定量分析を実施する費用」と「追加分析をしないでアスベスト含有建材として作業・廃棄した場合の費用」を比較し、トータルコストが安い方を選ぶ
追加で定量分析をしても、結局アスベスト含有となる可能性もあるため、EFAラボラトリーズのお客様では、「微量に検出」の結果が出た場合には、「アスベスト含有とみなす」判断をされている場合が多いようです。ここから、分析報告書を実際に見るときのポイントを解説していきます。
POINT1:「建材中のアスベスト定性分析 結果一覧表」で、アスベスト検出の有無を確認
表紙をめくってすぐに分析の結果一覧表があります。結果一覧表では、分析依頼書に記載いただいた試料No.と試料名称の建材リストと、分析結果を一覧表にまとめています。結果一覧表は、「どの試料からアスベストが出たか」をサッと見るのに使いやすいページになります。アスベストの種類と、大まかな含有量が確認できます。
アスベストの種類
アスベストには、クリソタイル、アモサイト、クロシドライト、トレモライトアスベスト、アクチノライトアスベスト、そしてアンソフィライトアスベストの6種類があります。
より詳細な層別の分析結果を知りたい場合は、次ページ以降に説明する「層別詳細結果」パートに進みます。
POINT2:「建材中のアスベスト定性分析 層別詳細結果」は3部構成
「結果一覧表」をみて、もっと層別の詳細な分析結果を確認したいと思ったら、該当の試料Noが記載された「層別詳細結果」のページをめくり、その建材の情報を探します。「層別詳細結果」のパートは、下記の順番で3部構成になっています。
分析結果の概要(上方グレー網掛け内)
層別分析詳細結果(中央のメイン部分)、
備考(下方黒線枠内)
まずは、①分析結果の概要(グレー網掛け範囲)をざっと確認して、詳細情報を探している試料No.をみつけて、結果一覧表と同じ情報(試料No、試料名称、試料全体中のアスベスト含有量、そしてアスベスト種類と含有量)が記載されていることを確認します。
POINT3:建材の層番号は、裏側から表側の順に表記
次に、①分析結果の概要(グレー網掛け範囲)の下に、②層別分析詳細結果が記載されています。②層別分析詳細結果の、一番初めのポイントは層番号部分で層数と並びを理解することです。この部分の読み方に戸惑うかもしれませんが、一番大事なポイントです。
ここで、少し慣れが必要なのは、躯体側が一番上(層番号が小さい)で、表層側が一番下(層番号が大きい)に表示されている点です。これは、分析をするときに試料をひっくり返して裏側の層からスライドを作成していくので、躯体側(裏側)が層番号1番になっています。イラストで示すとこのような感じです。
POINT4:建材の層構成比率と層の外観を確認する
②層別分析詳細結果の「層構成比率」と「層の外観」をみて、各層の概要を読みます。「層構成比率」と「層の外観」は、分析者が試料を目視または実体顕微鏡でみた各層の見え方です。
「層構成比率」は試料を構成する各層の大まかな厚みの比率です。現場施工されるような試料の層の厚みは、不均一な場合が多いため見た目からざっくりと厚みを判断しています。
「層の外観」は、実体顕微鏡で見た時のその層の見え方で、基本的な表現は「色 素材の質感」を示しています。そのため、「層の外観」の情報から、どんな材質だったか読み取るヒントになります。
なお、実体顕微鏡下で特定ができる建材については、素材の質感の代わりに素材名称を記載することもしています。現在、建材の素材名で記載しているものは、けい酸カルシウム板、ロックウール吸音板(岩綿吸音板)、せっこうボード、スレート板、モルタル等があります。 ただし、提供試料単体で素材の特定ができない場合は、色 + 素材の質感の表示になります。
POINT5:どの層になんのアスベストをどの程度含んでいたかを確認する
②層別分析詳細結果の「アスベストの種類」「層におけるアスベスト含有量範囲」を見て、アスベストの有無や種類、含有量を層別に確認できます。これは1層ずつプレパラートを作成し、それぞれの層を分析しているから判明することです。アスベスト含有量を示す範囲の隣の(かっこ)内の数字は、分析者が目視推定した含有量で、この推定量にもとづいて、濃度範囲を報告をしています。
一つの層に、複数種類のアスベストを含む場合もがありますが、その場合は右側に情報が追記されていきます。
POINT6:概要と層別詳細を総合して分析結果を読む!
ここまでに各項目についてみてきましたが、実際に以下の建材の例で分析結果を読んでみます。
上記の報告書を見ると、
・表層側から3層目(躯体側からも3層目)の全体に対し10%程度の厚みをもつグレー色のセメント質の層に、目視推定約2%程度のクリソタイルを含有
・試料No.1の「外装仕上塗材(RC下地)、1階 西面 外壁」全体としては、クリソタイルを0.1%超-5%以下の範囲で含有
と読むことができます。そして、アスベスト含有層がセメント質であることから、「もしかしたら、剥離剤が効きにくいかもしれない。電動ケレンでの除去になりそうかな?」のように、除去工法検討のヒントにすることができます。
POINT7:最後に、分析の補足情報を確認する
層別の詳細な分析結果の下に、分析時の補足情報として③備考が記載されています。たとえば、どのような前処理をおこなったのか、アスベスト以外の繊維状のものがある場合に参考情報として記載しています。
コメント部分には、分析対象としていない層(例えば、例えば躯体コンクリートは分析対象から外してほしいという要望があった場合など)があったり、分析の結果、アスベストが1本だけ見つかり、建材含有ではなくコンタミ(表面付着等)が疑われるような場合に、アナリストがコメントを記載します。試料採取日は、分析依頼書に記入いただいた日付が枠下に記載されます。
おわりに
わからないことがあれば、お問合せください!
最後まで、アスベスト分析結果報告書の読み方ガイドをお読みいただきありがとうございます。分析結果報告書の7つの注目ポイントがわかると、EFAラボラトリーズの報告書はだいぶ読みやすくなると思います。
もし、報告書内容でご不明な点やご質問がございましたら、お気軽にお問合せ 電話 0332636055 ください。(お問合せの際は、分析報告書の右上に記載されている「報告書番号」を合わせてお伝えください。)
今後ともご贔屓によろしくお願いします!