クリソタイル(白石綿)の繊維構造とは?中空で螺旋状の構造について解説
- Goro Kosaka
- 3 日前
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耐熱性・耐久性・加工性に優れ「奇跡の鉱物」とまで呼ばれたアスベスト。その中でも最も多く使用されている「クリソタイル(白石綿)」には、他の鉱物にはない特異な繊維構造が隠されています。
本記事では、クリソタイル独自の内部構造に焦点を当て、なぜ柔軟性・高強度・断熱性といった優れた性質を生み出すのかを、科学的な視点から解説します。
クリソタイルとは?
アスベスト(石綿)は、かつて「奇跡の鉱物」とまで称されるほどで、工業・建築分野において重要な役割を果たしてきました。耐熱性、耐久性、絶縁性に優れ、さらに安価で加工しやすかったことから、20世紀後半には世界中で幅広く使用されていました。
アスベストの中でも、世界で使用されている量の9割以上を占めているのが「クリソタイル」です。
現在、日本国内での使用は禁止されていますが、ロシア、カザフスタン、中国などでは現在も採掘・利用されています。
アスベストは大別すると、蛇紋石系(柔らかくしなやか)と角閃石系(針状で硬い)の2種類に分類されています。
蛇紋石系:クリソタイル(白石綿)
角閃石系:アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)など
クリソタイルは白色で柔軟なうえに加工しやすいため、建材(耐火被覆材・外装材・内装材)や、工業製品(パッキン・断熱材・接着剤・塗料)などに利用されてきました。


日本では1974年に輸入量がピーク(約35万トン)に達しましたが、その後は規制強化により大幅に減少していきました。
クリソタイルの繊維構造
クリソタイルは、他の鉱物には見られない独特な繊維構造を持っています。ここからは、電子顕微鏡を通して明らかになった繊維の断面や、構造が持つ機能的な意味について詳しく解説します。
電子顕微鏡が捉えた、クリソタイルのねじれた中空構造
クリソタイルを電子顕微鏡で観察すると、繊維の内部が空洞になっており、さらに螺旋状(スパイラル)にねじれた形状をしていることが分かります。


引用:Yada, K. (1971). Study of microstructure of chrysotile asbestos by high-resolution electron microscopy. Acta Crystallographica Section A, 27, 659-664. URL:https://rruff.info/uploads/AC27_659.pdf
この構造はストローを細くねじったような形状をしており、さらに内部は木の年輪のような層状の壁に囲まれています。この「中空かつ螺旋状の構造」こそが、クリソタイルの独特の特性につながっています。
中空×螺旋状の構造がもたらす、高い耐久性と断熱性
この中空かつ螺旋状の独特な構造により、クリソタイルは非常にしなやかで折れにくく、加工しやすいという特性を持ちます。ちなみに、この特殊な構造は、いまだに人造繊維では製造されていません。
また、繊維は絹糸状になっており、柔軟性にも富んでいます。抗張力は31,000 kg/cm²とピアノ線をも上回る強さを持っており、しなやかさと非常に強い強度を兼ね備えています。そして、クリソタイルは極めて細い繊維状の結晶構造を持ち、その隙間に多くの空気を含んでいます。
この隙間に含まれている空気が熱を伝えにくくするため、クリソタイルは約600℃まで安定するほど断熱性が高く、建材や断熱材として広く活用されてきました。

出典 榊原正幸, 上原誠一郎. (2006).アスベストとは何か?
このような中空で螺旋状の構造が、クリソタイルの優れた耐久性・加工性・断熱性を生み出しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、クリソタイルの繊維構造についてご紹介しました。
鉱物の持つ特性の背景を知ると、より深く理解が深まりますね。
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参考文献:
Yada, K. (1971). Study of microstructure of chrysotile asbestos by high-resolution electron microscopy. Acta Crystallographica Section A, 27, 659-664.
榊原正幸, 上原誠一郎. (2006).アスベストとは何か?.岩石鉱物科学 35, 3-10