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論文「アスベスト分析の屈折率測定における分散染色法技術とその適用」のサマリー



NVLAP技術専門家であり屈折率測定の専門家でもあるSu博士が、発表した論文「アスベスト分析の屈折率測定における分散染色法技術とその適用」の中で、アスベスト分析における分散染色法の有効性の検証にカーガイル社の浸液とEFAラボラトリーズが取り扱っているDRIMMC浸液をつかって検証をおこなっています。

このブログでは、このSu博士の論文の概要をご紹介したいと思います。


論文情報 原題:The Dispersion Staining Technique and its Application to Measuring Refractive Indices of Non-Opaque Materials – With Emphasis on Asbestos Analysis 著者:Dr. Shu-Chun Su(Technical Expert, National Voluntary Laboratory Accreditation Program)

キーワード 分散染色、屈折率、浸液法、偏光顕微鏡法、浸液、浸液の較正、カーガイル、DRIMMC、変換早見表

Su博士について

論文の著者であるSu博士は、 1988年から、NVLAPの固体試料中及び気中アスベスト分析プログラムの技術専門家として、アスベスト分析を行う分析機関に対して数多くのNVLAPの現地監査を行ってアスベスト分析に精通したエキスパートです。

研究と実務経験を通して、一般及び光学的鉱物学、記載岩石学、火成岩及び変成岩岩石学、地球化学、結晶化学、粉末及び単結晶X線結晶学、デジタル画像解析、偏光顕微鏡・走査電子顕微鏡・透過電子顕微鏡・赤外線分光分析・ラマン分光分析・共焦点レーザー走査顕微鏡などの様々な顕微鏡分析手法に通じる専門家です。

分散染色データからさまざまな波長における屈折率を得るという分析手法は「Su法」と呼ばれ、固体アスベスト分析に適用することにより、分散染色法を用いて迅速かつ正確にアスベスト繊維の屈折率を決定する標準的な手順を開発しました。

多くの国際的な学会で地球科学、鉱物学、アスベストについて発表を行っており、特にアスベスト同定やアナリストのための分析の基礎に関する数多くの実用的な論文を発表しいます。


 

論文の概要

米国では、「Asbestos Hazard Emergency Response Act (AHERA)」において、クリソタイル、アモサイト、クロシドライト、トレモライト、アクチノライト、アンソフィライトの6種類を規制対象アスベストとして定義している。また、地域の教育機関に対し、建築物のアスベスト含有建材の調査、建物管理計画の作成、アスベスト暴露防止または低減のための建物対応措置の実施を義務付けている。

建材のアスベスト分析には、偏光顕微鏡を使用した方法が指定(※1)されており、色彩、多色性、屈折率、複屈折、消光角、伸長の符号の6つの光学特性によって、バルク試料中のアスベスト鉱物を特定する。

米国商務省国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology:NIST)が管理する自主試験所認定プログラム(National Voluntary Laboratory Accreditation Program:NVLAP)(※2)では、アスベスト繊維の屈折率γとαは、日常的なバルクアスベストサンプル分析の浸液法によって決定する必要がある。一般的に達成可能かつ妥当と考えられる精度は、クリソタイル、アモサイト、トレモライト、アクチノライト、アンソフィライトで0.005以下、クロシドライトで0.010以下である。


分散染色は、透明固形(a nonopaque solid)とその周囲の浸液媒質の間の屈折率差を定量化するための有効な技術である。

多くの場合、αとγの両方をNVLAPで要求される精度で測定するには1つの浸液でのプレパラート作製で十分である。ただし、NVLAP Proficiency Testing (技能試験) の場合(または、屈折率を精密に測定する場合)には、α とγ に別々の浸液を使用することが推奨される。

規制6種類のアスベストに適した主要メーカー2社(カーガイル社とDRIMMC社)の浸液について、波長から屈折率へ変換を容易にするために変換早見表を掲載した。

高倍率分散染色対物レンズは、クリソタイルのαの測定のみに適切で、クリソタイルのγおよび、5種類の角閃石の α あるいは γ を測定するには不適当であるという事実にもかかわらず、角閃石について真の α に合理的に近い α’ を、クリソタイルと角閃石について真の γ に合理的に近い γ’ を得ることが実用的に可能である。高倍率位相差対物レンズについても同様である。

分析精度を確保するには、使用する浸液が正しい屈折率を保持していることを確認する必要がある。浸液の較正は、アッベ屈折計を用いた場合のみ正確に行うことができる。しかし、アッベ屈折計が利用できない場合、実用的な代替手段として、カーギル社の屈折率標準ガラス(※3)のような正確で精密な屈折率を有する光学ガラスを用いることも可能である。カーガイル社とDRIMMC社の浸液の両方に対応する変換早見表を掲載した。

DRIMMC浸液が他の入手可能な浸液よりも比較的高い分散係数を有するため、整合波長λmの評価においてより良い精度をもたらし、より鮮明でより良好に規定された分散染色を呈する。また、HD-Sシリーズ(※4)の1.550は、画期的な配合によって、従来の浸液の典型的な悪臭を持たないだけでなく、心地よいアロマを保ち日常の分析から苦痛をとりのぞく(原文ではmaking it enjoyable)ことに成功している。


注釈

※1 偏光顕微鏡を使用したバルクアスベスト分析規格「EPA/600/R-93/116」のこと。 EFAラボラトリーズは2007年から EPA/600/R-93/116 によるアスベスト分析サービスを提供してました。EPA/600/R-93/116は、ISO 22262-1に参照された主要な分析規格の一つ。ISO 22262-1が和訳された規格がJIS A 1481-1。

※2 NVLAPでは、分析品質マネジメントシステムと試験所の校正能力に関する技術的要求事項を満たしていることを示す必要があり、アスベスト建材分析のNVLAP認証を維持するためには、アスベスト分析に精通した技術専門家による監査がある。監査では、適切に分析知識と技術を有しているかと精度管理ができているかのテクニカルな監査がある。

※3 EFAラボラトリーズも屈折率標準ガラスを用いて定期的に浸液の屈折率を確認しています。屈折率標準ガラスのお問合せもあるため、輸入販売をしておりますので、ご希望があればお声がけください。

※4 日本未発売です。ご興味のある方はお問合せください。


 


Su博士は論文の中で、「DRIMMC浸液が高い分散係数を有するためより鮮明な分散染色を呈する。」と述べています。DRIMMC浸液をご使用でない方は、検証いただくための「DRIMMC浸液1.550」の無料トライアルサンプルがありますので、メールか電話でお問合せください。


また、「浸液って管理方法があるの?」というご質問をいただくことがあるため、「浸液の適切な品質管理講座」を始めました。論文のなかで紹介されている屈折率標準ガラスと浸液の屈折率変換早見表は、Su博士に許可をいただきEFAラボラトリーズの「浸液の適切な品質管理講座」受講者には無償で提供しています。

受講希望の方がいらっしゃいましたら、不定期開催となりますのでメールか電話でお問合せください。


お問合せ先

株式会社EFAラボラトリーズ 営業部 浸液担当 宛 TEL: 03-3263-6055 / Email: sales@efa.co.jp



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